1. エッセイ/マナー・応対力向上に力を入れる理由

エッセイ/マナー・応対力向上に力を入れる理由

真心の体現が応対に現れる

販売、飲食、接客サービス業。これらの業界は対人コミュニケーションを主とし、コロナ禍では大打撃を受けた方も少なくないでしょう。

私も接客応対の研修を中心に行っていたので、コロナ禍で大打撃を受けた一人です。昨今ようやく日常をとりもどした世間を見ていると、安堵感が湧き上がってきます。


そんな困難を乗り越えた今だからこそ、応対力向上が自社だけでなく、接客販売・サービス業界をさらに発展させ、しいては世界平和にも貢献できるという話をさせていただきます。

その前に、あなたに一つ質問をします。

応対力の向上のメリットは何でしょうか。


「売上が上がる」「クレームを回避できる」「リピートが増える」


これらは一般に言われるメリットで、当然認識していることではないでしょうか。

では、もう一つ質問です。

なぜ応対力を高めると上記の反応が起こるのでしょうか。


物事には必ず原因と結果があります。

原因となる本質を突き詰めることは、課題解決や企画立案をするためには不可欠です。


私はこの根源的な理由は「波動」であると捉えています。


波動というと、スピリチュアル的な印象でビジネス分野とは関係ないように思われるかもしれません。しかし昨今ではこの世はすべて波動エネルギーでできており、各々の波長、周波数によって影響しあった結果、現象が起こると量子力学的にも証明されています。


この波動には「共振」という作用があります。


たとえば、赤ちゃんの予防接種の会場では、一人の赤ちゃんが泣きだすと、周囲の赤ちゃんも一斉に泣き出す、という不思議な現象が起こります。


また社内で部長が顔をしかめ面にし、声を荒げた口調で部下を叱責していると、部内全体が重たく、ピリピリとした雰囲気になる。反面、明るい声で笑顔で部下を労っていると、スタッフにも笑顔が生まれ、和やかな雰囲気になる。といった状況を目の当たりにした経験はないでしょうか。


水面に1滴の水を垂らすと、波紋が広がり、周囲に大きな影響を与えます。

たった1滴だとしても。


少し話はそれますが、リーダー、経営者は、この1滴の存在。

だからこそ日ごろからご自身が発する「波動」に心を配ることが不可欠でもあります。


応対力に話を戻しますが、現場でお客様に接するスタッフこそ、この1滴の存在。

共振を起こす「核」です。


この核となるスタッフが、


お客様を気持ちよく迎えたい。

居心地よく過ごしてほしい。

喜んでほしい。


とお客様のことを考えた応対をすれば、その心は確実に伝わります。そしてその結果、お客様の購買やリピートを生みだすこととなるのです。


私は過去、1000店以上の店舗診断を行い、応対力の高い店は売り上げも比例している事実を見てきました。


もちろん商品の魅力も大変重要です。

しかしそれを伝える各スタッフの応対力は、売上・リピート向上の要となります。


さらに、この効果・影響力は店内だけではありません。


少しイメージをしてください。


あなたはとある会社の営業部長です。

真夏の暑い盛りの14時、客先の帰り道にあまりにも暑く、一服の涼を得たいと思って飛び込んだとあるカフェ。

汗を拭きながらドアを開けた瞬間に、スタッフ全員がこちらを向いて、満面の笑顔で「いらっしゃいませ」と元気で明るい歓迎のあいさつをしてくれる。


すぐにスタッフの1人がかけよってきて


「暑い中ご来店ありがとうございます。外はとても暑いですよね。ただいま、ちょうど空調がきいて涼しい席が空いているのでそちらへご案内することもできますがいかがですか?」


と、この暑い中ネクタイとジャケットを着用していた私の気持ちを汲み取ってくれているかのような声かけ。


気が利いているな、と思いながらこの暑さなので、いつもなら選ばないであろう空調が強く感じる席を選択し、着席。

冷たい冷房の風が心地よく感じる。


案内をしてくれたスタッフは視線を合わせて、


「暑い中お疲れ様です。今冷たいお水をお持ちしますので、少々お待ちくださいませ。」


と笑顔で伝えてくる。


そして素早くお水と冷たいおしぼり、メニューを持ってきた。


「こちらがメニューですので、お決まりになりましたらお呼びください。お勧めのかき氷を召し上がると、きっと涼しくなりますよ。」


とまた満面の笑顔で伝えてくれた。


とっても感じのいいスタッフだな、うちの社員もあれくらい笑顔でいてくれたら、もっと売り上げも上がるだろうに・・・なんて思いながらメニューを見る。


メニューを渡されたものの、おススメのかき氷が10種類以上ある。

かなり種類が多くて何を選んだらよいのか迷う。

選ぶのもめんどうだからいつものアイスコーヒーにしようか、いや、この暑さだからやはりめったに食べないかき氷もいいかな、としばらく考え込んでいると、こちらの迷っている様子を察したかのように先ほどのスタッフが近づいて声をかけてきた。


「かき氷の種類が多いので、選ぶのに迷われていますか。」


とこちらの気持ちを察するように話しかけてきた。

声をかけられることはあまり好きではない。

いつもならそっけない対応をするところだが、笑顔と自然な声かけに思わずつられて


「たくさん種類があるから迷っちゃうね。」

「そうなんです。他のお客さまもよく迷われているので、お好みを聞いてご提案をさせていただいています。甘いものはお好きですか?」


とさりげなくこちらの好みを聞いてくる。


「甘いものは苦手なんだよね。」

「でしたらサッパリとした柑橘系がおススメですよ。」


とこちらお好みを丁寧に聞き、最終的にレモンとキウイのかき氷に決定した。


「おいしいかき氷を作ってまいりますので、少々お待ちくださいませ。」


と笑顔で立ち去り、


「お待たせしました。」


と待ちに待った、かき氷が到着。


一口食べると、口いっぱいに酸味と甘酸っぱさが広がり、氷の冷たさとともに体全体に涼がかけぬけていく。


「もし寒くなった場合は、お席の異動もできるので、遠慮なく声をかけてください。」


との言葉。かき氷を食べて、体が冷えることを気にしてくれたのかもしれない。ちょっとした一言だけれども、とってもありがたく感じる。


かき氷を食べ終えて、心も体も満足し会計へ。


「涼んでいただけましたか?外は暑いですが、どうぞお気をつけて。またよかったらいつでもお立ち寄りください。」

と満面の笑みで伝えてくれる言葉が心地よく、思わずこちらも笑顔になる。


そして店を後にするときには、


「ありがとうございました。」


と店の奥から聞こえる明るい声がやまびこのように聞こえて見送ってくれた。


外に出た時に、暑い日差しが照っていたが、スタッフの明るい笑顔と心遣いが気持ちよかったなあ。好みにあったかき氷が食べられたなあ~と入店した時から比べて心が軽くなっている自分がいた。


「さあ、もう一仕事するか。」


と会社へ戻ると部下が待ち構えていたように、見積書の確認にやってきた。

いつもなら帰ってきて早々なんだよ、とイラッとするところだが、今は気分がいい。

そうそう、先ほどのスタッフの笑顔を思い出し、そういえば「暑い中お疲れ様です。」と一言労ってくれてうれしかったなあと思い出した。


部下も暑い中頑張ってくれている。


そんな気持ちが湧き上がり、いつもはあまり見せない笑顔で「ありがとう」と一言お礼を言い、必要な修正箇所を伝えた。

部下はいつもと違う応対に少し驚いたようだったが、とても嬉しそうな表情をして、


「すぐに取り掛かります」と張り切った声で修正に取り掛かっている…


さて、いかがでしたでしょうか。


部下たちの笑顔が出ないのは、自分のせいなのかもしれない…


もしかしたら、店で受けた応対が、とある部長の部下への対応を考え直すきっかけになるかもしれません。


これは一つの事例ですが、あなたの店・スタッフの応対力が周囲を変革させる「核」になること。そして応対力は自社だけでなく、社会を変えるぐらいの、力を秘めていることをおわかりいただけたでしょうか。


応対力の根底にあるのは、相手への思いやり・真心です。


だからこそ応対力を高めることは、CSR(社会的責任)の実践にとどまらず、社会平和へ貢献していることと同じ価値があるのです。


私は、相手への思いやり、真心にあふれる世の中を作りたいと心から願っています。


だからこそ応対力向上に力を入れているのです。